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学生時代に学んだ鎖国を本気で考える

学生時代にとって大切なことは色々とありましたが、歴史の授業の場合大切なことは何だったでしょうか。人にもよるでしょうが、あくまでテストで点数を取るために丸暗記するための材料という認識の人も多いと思います。そのため、ちょっとひっかかるけど暗記するだけだから放置されていた部分もあるでしょう。そこで、今回は、その放置されていた部分の一つである「鎖国」について考えていきたいと思います。

■鎖国って何だっけ?

鎖国とは江戸時代に幕府が貿易相手をオランダや中国に絞って他の国々とは海外渡航を禁止して貿易を管理及び制限した政策のことです。そのために近代化も遅れて、世界情勢から取り残され、明治維新などの大きな出来事に繋がると多くの方々は考えておりましたが、一部の方々からは「そもそも江戸時代は鎖国の時代ではない」という意見があり、鎖国という言葉そのものを否定する意見もたくさん出ているのです。

この意見の根底にあるのが「オランダや中国に絞って他の国々とは海外渡航を禁止した」という部分です。この文章だけを真剣に考えると、オランダや中国以外の国々とは一切の取引をしていない孤立状態のことを表しているのですが、本当に孤立していたのかが疑問視されております。

一般的に鎖国は1639年のポルトガル船入港禁止から1854年の日米和親条約締結までの期間でだいたい200年ほどのことをさしているのですが、この時期でも東アジアの中で孤立していたわけではなく取引をしていたと考えられているのです。

■鎖国という言葉はもう使われていない?

近代の研究では従来の「鎖国」概念を廃するようになって、一連の政策は徳川幕府が中世の対外関係秩序を再編したものと考えられるようになったので、鎖国という言葉が減ります。2017年2月には2020年度から使用される予定の中学校の次期学習指導要領改定案では「鎖国」という表現は削除されると言われておりますので、教科書からこの言葉はなくなるのでしょう。

要するに、幕府側からすれば鎖国を意図的に行っていたのではなく、たまたまその状態が続いていただけであり、何となく鎖国に近い状態になっていたというのが答えと考えられるようになったのです。今の教科書でも「鎖国でした」と断言しているのではなく「鎖国と呼ばれる状態だったようです」のような、非常にふわっとした言い方になっているようで、鎖国という言葉を使うのに慎重になっていました。今回の学習指導要領改定案で使われることが無くなるのなら、テストでもこの言葉は出なくなるということなのでしょう。

時代の移り変わりによって考え方も変わっていくものではありますが、同時代の東北アジア諸国では「海禁政策」というものをとっていたので鎖国ではなく「海禁」という言葉を使う傾向にあるとのことです。鎖国の「鎖」という言葉が嫌われているイメージもありますし、対欧米諸国の視点に基づきすぎているという指摘も出てきていますから、この言葉は消えていくようになるのも納得と言えるでしょう。