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理想の青春が詰まっている

やまざき貴子さんの『っポイ!』は幼い頃からの幼馴染である中学3年生の天野平(あまのたいら)と日下万里(くさかばんり)を主軸に周囲の人間との恋愛模様や友情、悩みなど中学3年生ならではのリアルな青春を感じることができます。
主人公の1人である平くんは身長が女子並みに低く、顔立ちも童顔で可愛らしいことからよくからかわれていましたが、根は少年無垢な優しく頼りになる性格の持ち主なので男女問わず好かれ、平くんの周りにはいつも友人がいます。
もう1人の万里くんは高身長でイケメンで勉強もスポーツもできる完璧な人間です。しかし、平くんのことを誰よりも信じ、心配し、平くんに何かあればどんなことをしてでも助けるという友達思いの一面もあります。

自分の青春時代を振り返りながら読むと、こんな青春してみたかったなあ、というのを感じます。巻数が多い分、濃密なみんなの青春をのぞき見ることができます。
中学3年生とは思えない大人のような闇や感覚を抱えていたり、中学3年生ならではの悩みを抱えていたり、みんなたくさん悩んで苦しんでいますが、それでも前を向いて笑顔で進もうとします。
そうしたみんなの悩みに寄り添い、明るい方へ導くのが主人公の平の役割のように思います。よく見かける青春マンガはとにかく明るく、元気で励まし合い、仲間がいるから大丈夫!というような風潮ですが、このマンガは闇は闇としてとらえ、時に解決し、時に解決しようとはしないままに考えの方向性を変えるだけ、ということもあります。恋愛に対しても少し歪んでいる場合もあり、あらゆる方向の人間を描いています。
この点は、青春時代のみならず、社会人にもあるものなのでどこか共感してしまいますし、こういう考え方があるのか、と驚かされます。
青春時代の全てが爽やかで無邪気な時間を過ごしているわけではなく、当然その間には嫌なことをされた時期もあっただろうし、してしまった時期もあったように思います。けれど、そこをどう乗り越えていくのか、乗り越えるためにこんな友人がいたらよかった、そんなことを考えさせられます。

そして何より胸にくるのが、巻数が増すごとに登場人物達がしっかりと成長していくこと。青春時代というのはよくも悪くも人に左右されがちです。しかし、平くんに出会った人物は一様に何かにぶち当たっても前を向く強さを持ちます。自分なりの考えを持ち、その考えは正しいのかどうかを友人達に尋ね、友人達も真剣にその話を聞き、会話をする。
コミュニケーションの幅が広がったようで狭くなったと感じる現代において、きちんと顔を合わせて、本音で会話をする友人関係が築けている若い人達はどれだけいるのか。また、社会に出るとますます狭まる交友関係の中で、自分が信頼できる人間はどれだけいるのかを考えさせられました。
青春時代にこうした良好な友人関係を築けていたら、きっとどんな悩みにもくじけずに生きていけるのだろうなと思います。
自分の人生に誰も関わらないことがないのと同じで、自分が他人の人生にどう影響するのかを考えるきっかけを作ってくれたマンガです。
同年代の時も少し大人になった今もあらゆる年代で楽しめるマンガだと感じます。