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命と暮らすということ

私は、動物系のマンガは若干苦手でした。どうしても、泣かせようとしているのではないか、という邪推が働くからです。しかし、片倉真二さんの『ペン太のこと』をたまたま読んだ時、不思議とその邪推は働かず、泣いていました。
飼い猫「ペン太」との暮らしを回顧した内容なのですが、心底愛情を感じます。
こんな風に暮らせてペン太は幸せだったのだろうなあ、とページをめくりながらこちらが実感してしまいます。
特に冒頭、お互いのすれ違いから夫婦仲が悪くなってしまった時にペットショップでペン太と出会って、一緒に家に帰る道すがらペン太と見た桜のシーンはまだ物語が開始したばかりなのに泣きそうになっていました。
これから暮らす楽しみという気持ちと不安な気持ちがこのシーンに凝縮されているような場面です。

そして、ペン太が家に来てからというもの、ギクシャクしていた夫婦関係にも変化が訪れます。まるで子供を育てるように二人でペン太を愛し、ペン太を通して夫婦の絆を強くしていきます。ここまで、人は変わるのか、というくらいに生活がペン太中心になり、ペン太のためならなんでもします。
猫らしさがあまりなく、穏やかで人の気持ちに敏感なペン太はいつも夫婦を癒してくれるのです。
ペン太を飼うことによってすっかり猫の愛らしさにハマッてしまった夫婦はその後も数匹猫を飼います。この時のペン太の対応もとても可愛いです。仲良くなれる猫、なれない猫、人間社会同様に猫社会でも同じことが起きていて、それに対して飼い主はどう対応するべきなのか、マンガを通して一緒に悩んでしまいました。
また、主人公達は多頭飼いをしていても、それぞれの命に対して責任を感じながら暮らしています。その証拠にむやみに猫を飼うことはしません。今の自分達の状況を踏まえ、しっかりと夫婦で話し合い、幸せにできるのかどうかを考えた後に猫を迎え入れます。ここまで考えている人はなかなかいないのでとても共感できました。

未だに動物を飼うことに責任を取れない人がたくさんいます。
そのせいで心に傷を負う動物達もたくさんいます。
しかし、多くの場合はこのマンガの主人公のように猫でも犬でもしっかりと命と暮らし、向き合い、家族として深い愛情を注ぎます。自分達よりも短い命を持っている動物達に対して生きている間に何をしてあげられるのか、愛するというのはどういうことなのか、そんなことを考えながら読むことができます。
別れが怖くて動物を飼えないと思っている人も今何か動物を飼っているという人にも涙なしに読むことはできませんが、自信がついたら飼ってみようかなという一歩にもなりますし、今一緒に暮らしている動物達をさらに愛してあげようと思うきっかけにもなります。動物というのはいつも人に気付きを与えてくれ、支えてくれ、癒してくれます。
このマンガではペン太がどのように夫婦を支え、癒し、大事にされてきたのかが丁寧に描かれています。途中で発生する新しい猫の登場も心を和ませてくれるので、ペン太以外の猫達の可愛らしさにも癒されます。