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言わずと知れたマンガ

ドラマにも2度なり、知らない人はいないくらいのマンガになっている鈴ノ木ユウさんの『コウノドリ』は産科医視点で繰り広げられる医療マンガです。
しかし、スーパー産科医が登場するわけでも医療ミスが起きて裁判になるわけでもほのぼのしているわけでもなく、リアルな出産を見ることができます。

総合病院が舞台になっているので、救急搬送されて命に危険がある妊婦さんもいれば平穏に出産までいく妊婦さんもいて様々です。それぞれの妊婦さんの抱える問題や産後の悩み、妊娠中の悩みなどマンガの中だけの出来事とは思えないものばかりです。
特によくクローズアップされるのが、良いお産、についてです。
これは妊婦さんの平均出産年齢が上がったことや母性神話のようなものが要因となり、医師の手を借りず、自然分娩をすることが正義であり、良いお産だ、と考える人が増えてきているため、過度の帝王切開拒否や疾患がありやむを得ない場合でも無痛分娩を拒否するなど弊害が生じています。
けれど、そのように思う妊婦さんの考えも否定できるものではなく、周りの声に揺らいでどうすればいいかわからないと葛藤した結果のことなので医師としてどう向き合うのか、患者の気持ちに寄り添うというのはどういうことなのかをマンガを通して感じられます。
主人公である医師、サクラはそうした意見を持つ妊婦さんに必ず言うことは「赤ちゃんもお母さんも元気なことが良いお産」という言葉です。
無事に出産し、赤ちゃんにもお母さんにも何の問題もなく終えることが良いお産なのだ、と静かに話すサクラの顔はとても穏やかでこんな風に言われたら、きっと凝り固まった気持ちも柔らかくなるだろうなと感じます。
実際、緊急帝王切開になった時に不安そうな妊婦さんへこうした言葉をかけるだけでこの医師についていこうという気持ちになれると思います。

もう知られた話かもしれませんが、このマンガには明確なモデルになった産科医がいます。
ピアニストであり産科医でもあるサクラそのものだと評判が高いです。
また、サクラ以外にも他の産科医や助産師、ケースワーカーなどあらゆる人達が出産に挑む家庭をサポートし、ケアしようと一生懸命になっているのもこのマンガの特徴です。読んでいる側としては、こんな病院で出産することができたら幸せだなという気持ちにさせてくれます。
出産が誰一人と同じではないのと一緒で、妊婦さんが置かれている状況も一人一人違います。マタニティブルーに悩んでいたり、産後うつになっていたり、未成年だったり、夫のDV問題など現代のあらゆる問題をクローズアップしてくれているので、実際にそうした問題で悩んでいる人を見かけたり、自分が悩んだ時にどのようなサポートを受けることができて、どこに相談することが適切なのかをマンガで学ぶことができます。
妊娠や出産は経験がないことや個人差があることがほとんどなので他人事になりやすいですが、自分がどうやって生まれてきたのか、自分の親はこんな思いをして生んでくれたのかということを考えてみると新しい視点で振り返ることができます。